七夕フェア第１弾



〜遠距離恋愛の法則〜



Side　Ｄ−２











７月７日









今日はあいにくの雨。

そういうときに限って冷蔵庫の中には何も無い。

外で食べようと思ったが、なんとなく雑踏の中、一人では食べる気がしなくて。

珍しく買い物だけして帰ることにした。







「お〜、デュオちゃん」

管理人件警備員のおっちゃんに呼び止められた。

「？」

「友達が部屋の前で待ってるはずだよ、早く行ってやんな」

話するやつは沢山いるけど、ここへ来るような友達なんて作っていない。

そして、かつての戦友（？）は、今それぞれの場所で生きている。

ここにくるような奴なんて、いるはずがないんだ。

そんなはず無い。

でも、どうしても思い浮かべてしまい、消えない『奴』がいる。

いつも上る階段なのに、中々前へ進むことが出来ない。

４階にある自分の部屋がもどかしい。





「はぁ…はぁ…はぁ………！」



嘘だ。

きっと疲れすぎて幻覚が見えるんだな…。

だって、目の前にヒイロがいるのだから。



「デュオ」



そんな優しい声なんかしてない。

そんな優しい目で見てくれない。

そんな笑顔…向けない！！



そんなの嘘。

ヒイロのほうが自分より表情豊かだ。

自分よりも優しい。



「っ…」



足がもつれそうになる。でもかまってられない。

幻覚でもいい！

夢なら覚めないでほしい。そう願って、広げる手の中へ飛び込んだ。

「……ふっ…」

きつく抱きしめられ、これが夢でないことを知らせてくれる。

「ヒイ…ロぉ」

ヒイロの…匂いだ…。

硝煙と、オイルと。血の匂い………。

懐かしい匂いに包まれて、落ち着いてくれば先ほど乱した行動を思い出し、恥ずかしさがこみ上がる。

「まっさかヒイロ様直々いらっしゃってくれるとは思わなかったぜ！」

嬉し泣きで、声が少し震えてよけい恥ずかしい。

「久しぶりにお前のまずい料理を食べに来た」

「うっわ、ひっで〜やつ！」

買い物だけして帰ってきて正解だ。

たいした量ではないがこれだけあれば何かしらは作れるから。

「胃薬でも用意しときますか、お・きゃ・く・さ・ま」

わざとらしい言い方に、ヒイロが苦笑しながら小突ついてきた。

でもそれだけでも嬉しい。





「その前にタオルだな」

「あ」

見れば、自分はレインコートだけで外を歩き回っていたのだ、

かなり濡れている状態のまま飛びついたので、

ヒイロの服はかなりの水分を含んで湿っていた。

「すまねぇ。着替え用意するよ…どうせ泊まってくんだろ？」

鍵を開けながら、まず何をするか頭の中で順序立てる。

ヒイロの予定はどうなっているか分からないけれど。

これだけは確信をもてた。



オレに会いに来てくれたってこと。

「あぁ」

そしてヒイロは、オレの思いを裏切ることなく、肯定した。

久しぶりの………熱い夜が、来る。





「では、ようこそＬ２へ！」

そしてオレは、ヒイロを招き入れた。






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