七夕フェア第１弾



〜遠距離恋愛の法則〜



Side　Ｈ−２











７月７日









標準時間１２：００、

俺はＬ２へ到着した。

Ｌ２のプリベンター本部は宇宙港からバスと電車を乗り継いで１時間ほど。

しかし今回は仕事ではないし上司からの言付けもない。

俺は、敷地内にある社員専用住居へと足を向けた。









入り口はオートロックがかかっているが、管理人に身分証を見せればフリーパスだ。

「デュオちゃん、今出てていんよ。すぐ帰ってくると思うが、中で待っていれば」

「いや、気遣いありがたいが…部屋の前で待たせてもらう」

軽くお礼をすると階段を上がっていった。



扉を見て、管理人の言ったとおり中には気配を感じない。

ここの警備は厳重だ。身分が分からないものなどは絶対に入れないから、

自分の部屋にいて気配を殺すことは無いだろう。

無理やり開けることも可能だが、

先ほどの管理人の言葉を断った手前もあるし、する必要も無い。

扉に凭れ、回りに気配を広げた。

暫くすれば雨の音に紛れ、小さな足音が聞こえる。

その直後に、ドサリと物が落ちる音。

ゆっくりそちらのほうへ目を向ければやはり。

「デュオ」



相変わらず変わらない幼い顔。

しかし体は前に会ったときより痩せて見える。

相変わらず無茶をしているのだろう。

「…っ」

泣きそうな顔をしている。

何かまずいことでもしたのだろうか…。

しかし飛びついてきたデュオを両手を広げて受け止めた。

「……ふっ…」

きつく抱きしめてきたデュオに、自分もきつく抱きしめ返す。

「ヒイロぉ…」

水に紛れて隠れている腕の中の人の匂いを探り当てて吸い込んだ。

自分と同じ、戦場に身を置いたもの特有の匂い。

硝煙と、オイルと。血の匂い。

そして自分だけが感じる甘い誘惑…。

どれだけこの温もりに飢えていたか思い知らされた。



「まっさかヒイロ様直々いらっしゃってくれるとは思わなかったぜ！」

少しもぞもぞしていたのは、どうやら先ほどの泣き顔に対する恥ずかしさだろうか。

顔を赤くし、視線をそらしたままだ。

どうせならこちらを向いてほしい。

「久しぶりにお前のまずい料理を食べに来た」

だから業と言ってやった。

「うっわ、ひっで〜やつ！」

案の定いつものデュオに戻り、おちゃらけた笑顔を向けてきた。

「胃薬でも用意しときますか、お・きゃ・く・さ・ま」

ウィンクを飛ばしてきたデュオを小突いた。

久しぶりのやり取りが何故だか嬉しい。



「その前にタオルだな」

「あ」

レインコートのまま外を歩いていたのだろう、

飛びついてきた時にコートについていた水分がすべて服が吸い込んでしまい、

散々な状態になっている。

「すまねぇ。着替え用意するよ…どうせ泊まってくんだろ？」

わずかにデュオの瞳が細くなる。

「あぁ」

自分も珍しく素直に認めた。そのために来たのだから。



「では、ようこそＬ２へ！」

そしてデュオに誘われ、ゆっくりと扉を閉めた。




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