SHINING STAR〜わたしだけの翔星〜9





　いとも簡単にスザクと引き離され、王宮の自分の部屋へと連れ戻された。
「くそっ…」
　殴られて気を失ってしまったスザクがあの後どうなったのか気がかりだ。
　自分と関わってしまったばかりにスザクに怪我をさせてしまった。その悲しみと怒りが今ルルーシュを襲う。
　例え父と言えどこの所業は許すことは出来ない。
「ルルーシュ皇女殿下。お着替えでございます」
　乳母やと侍女達が運んできたのは黒を基調としたイブニングドレス。ルルーシュの正装だ。
　ルルーシュはされるがまま体を綺麗にされ、そしてドレスへと着替えさせられた。
「後ほど呼びに参ります」
　それだけ言って退室していった乳母や達だが、外鍵をかけられた事に気付いた。
　必死で策を練る。何とかしてここを抜け出す方法を。
　扉からは出られない。覗くと窓の外は衛兵達が抜け目なく配備されている。
「せめて扉が…」
　外鍵をかけていったという事は廊下は警備が手薄になっているはずだ。ここを抜ければ何とかなるかもしれない。
　しかし頑丈な扉はルルーシュの腕力ではびくともしなかった。
　コンコン
　ほんの控えめな音がする。それも扉の向うから。
「お姉様」
「ナナリー！？」
　声の主は妹・ナナリーだった。
「お姉さま。ここからお逃げください」
　扉が開いて開口一番のナナリーの言葉はそれだった。
「ナナリー？」
「このままではお姉さまは幸せになれません。お姉さまの幸せが私の幸せなのです。お父様達の言いなりになってはダメです！」
「ナナリー…」
「私は大丈夫ですわ。コーネリアお義姉さまもユーフェミアお義姉さまもいらっしゃいますから」
　自分の足の変わりに飛び立って欲しいとナナリーに言われ、ルルーシュは溢れ出る涙を止めることが出来なかった。
「ありがとう、ナナリー」
　妹を強く抱きしめる。
　小さく守られる存在だった妹は、こんなにも大きくなっていたのだ。
「さぁ早く！」
「ありがとう」
　ナナリーに急かされるまま、回廊を駆け抜けいつも使う秘密の抜け穴へ向かう。
　しかし。
「コーネリア姉上！？何故ここが…」
「知っていたよ。ここは私が昔ナナリーに教えてあげたのだから。最も、先ほどまで忘れていたがな」
　思い出した。教えられた当初、コーネリアから教えてもらったとナナリーが言っていた事を。
　退路は断たれた。
「姉上！」
「まったく、お前ときたら…この四日間の態度は何だ。相手に対しても失礼だろ」
　最初は反対していたはずの義姉が態度を１８０度変えていた。よほど礼儀正しい奴なのだろう、その婚約相手は。
「連れて行け」
「はっ。失礼します、ルルーシュ皇女」
　不用意に家臣が皇女に触れてはならないが、使える皇女コーネリアの指示は彼女の騎士であるギルフォードには絶対である。
「離っせ！」
　力の差は歴然で、抑えられればルルーシュは動くことも敵わない。聖堂の扉が開けられ、玉座まで運ばれて父の姿を目に入れてしまえばもう逃げる術は無くなった。

　スザク…！！！

「いい加減にせんか、ルルーシュ」
　世界を束ねる皇帝陛下の威圧感は、ルルーシュと言えど竦ませるに十分だった。
「我侭はここまでだ」
「…！！」
　もう逃げられないのか…。
　普段放任なくせにここぞとばかりに父親だと主張するこの男に嫌気が差す。
　素性も分からぬ男の物になる位なら。
　言いなりになる位なら死んだほうがましだ！
　懐に隠しおいたナイフを取り出し、切っ先を自分へと向けた。

　せめてスザクにもう一度会いたかった…。

　しかし自分の行動を既に見越していた皇帝がルルーシュの細い手首を強く掴む。
「くっ…」
　カランと音を立ててルルーシュの手からナイフが零れ落ちる。
　悔しさに睨み付けた先、皇帝の瞳は愉快そうに歪められた。
　それは時折子供達にのみ向けられる顔で、何か企んでいることに気付いた。
　一体何を？
　父親から目を反らさぬまま思考を張り巡らしていた為、入口から響いた近衛兵の声さえ耳に入らなかった。
「皇帝陛下、この度はお目通りありがとうございます」
　聞き覚えのある声。
　まさか…？
　ルルーシュは信じられない思いでゆっくりと顔を向けた。
「枢木の息子よ、遠路遥々良く来た。父君は息災か」
　赤い絨毯の上、膝を着き頭を垂れるのは白い騎士服を来た人物。
「はい、良い焼酎が手に入ったので今度ゆっくり飲み明かしたいと申しておりました」
　上段にいるルルーシュからは顔は見えないが、跳ねた栗色の髪はとても見覚えがあるものだった。
「そうか、それは楽しみよのぉ」
　まさかこんなことが…。
　ルルーシュは驚愕に目を見開いた。
「皇帝陛下、お願いがあります。このたびの婚約の件ですが…」
　しかしその先に言葉は、続くことはなかった。
　
　
「スザク」
　
　

「え…ルル…？」




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やっと二人が再会できました！！次でラストです！！皇帝だろうがなんだろうが、声が若本さんだからギャグになる。ご本人は不本意だろうけど（笑）
20070129