SHINING STAR〜わたしだけの翔星〜7





　黒服の男達が追いかけてくるのを二人は振り切る。地の利はルルーシュにあった。伊達に街中を遊び回っていない。
「スザク、こっちだ」
　飛び込んだ先の教会で、二人は荒い息を堪えて通り過ぎるのをじっと待った。
　気配がなくなりホッとして、今更ながらにスザクに抱きしめられていることに気付いたルルーシュは慌てて離れようとして、だが背に廻された腕に抜け出ることが出来ない。
　思わず恥ずかしくて顔を伏せた。
　昔はルルーシュの方が少しばかり高かった身長は、今ではスザクが少しばかり高くて。
　それが少しばかり悔しくて、でも守ってくれる逞しい腕がなんだか気恥ずかしい。
「大丈夫、ルル？」
　疲れているのかと勘違いしたスザクは心配そうに耳元でそっと囁く。
　それがルルーシュを余計に煽っているとは知らずに。
　普段鍛えているスザクとは違い、ルルーシュはそれほど運動が得意ではないから、スザクとしては心配だっただけなのだが。
「ルル…？」
　ぎゅっとスザクの服を掴む。
　離したくない、離さないで…。
　不意に黒服達が脳裏をかすめ、ルルーシュは震えだした。
「家の者だ…俺を連れ戻しに来たんだ」
　まさかここに来て動き出すとは思っていなかった。
「父上が、勝手に…。俺はイヤだ、スザク以外の人となんて…！！」
「ルル…！」
　彼女の背景に何かが起こっていることを感じ、スザクは背に廻す腕を一層強く抱きしめた。
　彼女もそれなりの身分であることは分かっていた。年齢を重ねればそういった話が来るのもおかしくない。
「お願いだスザク、俺を連れて逃げて…！」
　自分が何の為にこの国へ来たのか、スザクは今分かった。
　導かれたのだ、お互いの運命に。
　ならすることは一つだけ。
「ルル…さっきの質問だけど。僕にも、その…婚約者がいるらしい。親が勝手に決めた、ね。連れ帰る為にこの国へ来たんだ」
「スザ…ク…？」
　スザクも自分と同じ境遇になっていることにルルーシュは驚愕する。
「でもごめんだ、親の言いなりにはならない」
　この婚約事態最初から乗り気ではなかった。親は自分には心に決めた人がいると知っていたはずだ、いくら親でも許せることと許せないことがある。
　既に時刻は正午を過ぎ、ユーフェミアとの約束の時間が近づいている。このまま逃げていれば何時までも現れない自分を心配するだろうが構わなかった。
　自分に良くしてくれる姫君達には申し訳ないが。
　まだ見ぬ婚約者より、目の前にいる愛しい人を優先して何が悪いだろうか。望まぬ結婚など今更時代錯誤もいいところだ。
　家のことなど関係ない。
「ルル、僕のお嫁さんになってくれますか？」
「スザク…」
　掌を当て、そしてゆっくり指を絡める。
「バカ」
　是と返ってくると思っていたのに、予想外の言葉にスザクはうろたえてしまう。
「ルル？」
「昔からの夢だったの、知ってるだろう」
　それでも嬉しさから、ルルーシュは熱くなる顔を止めることは出来なかったが、スザク相手なら構わなかった。
　どうしてこんなにも愛しいのだろう、とスザクは思った。
「富めるときも、貧しきときも」
「スザク？」
　額を合わせてスザクが紡ぐのは結婚式の誓いの言葉。
「「病める時も、健やかなる時も」」
　ルルーシュも共に誓いの言葉を述べる。
　二人だけの神聖な儀式。
「二人が死を分かつまで」
「いや、死を分かつとも…だ」
　潤んだ瞳がスザクを映す。掠れた声が色っぽい。
「ルル…」
　スザクの声がルルーシュの耳に心地よく響く。
　他は何も聞こえない。互いしか見えなかった。
　彼女の惹きつけて止まない至高の紫玉に見つめられ、スザクは何度心を高鳴らせ魅せられたことだろう。
　重なった唇。
　時間にしてみればそんなに経っていないけれど。
　でも二人にとっては永遠の時間に感じられた。
　あの別れの日。幼いながらも誓いを込めて交わした口吻は、幼さゆえの可愛らしいものでしかなかった。
　今はそれだけでは済まない熱が二人を溶かす。
　誰も祝ってくれないのは淋しいけれど。でも互いがいればそれが至上の幸福。




　何時までもこうしていられたら良いのだけれど。
　捕まる前にと二人は行動を起こした。
　しかし配備された容赦ない数に、あっけなく見つけられはしたが見えた敵は二人。これなら何とかなりそうだとスザクは構えを取ると、先制攻撃と足を踏み出した。相手は不意の攻撃に体勢を崩し、スザクの蹴りが綺麗に嵌り吹っ飛んだ。着地して続けざま廻し蹴りをして相手が倒れたのを確認すると、ルルーシュの手を引っ張った。
「ルル、こっち！」
　先ほどよりも追いかけて来る人数が多い。無線か何かで連絡を取っているのだろう。路地を駆け回るがついに挟み込まれてしまった。
「いい加減お戻り下さい」
「俺は帰らない。父上の言いなりにもならない！」
　ルルーシュを庇いながらの戦いはスザクには不利だった。
　ほんの一瞬の隙を付かれ、背後を取られそのまま殴られる。
「うっ…」
「スザク…スザク！！」
　ルルーシュは黒服に捕まりスザクから簡単に引き離される。
　こんなことで離れ離れになってしまうのか。
「いやだ、離せっ！スザク、スザク−−−−−！」
「ル…ル…っ」
　ルルーシュの叫びを最後に。
　スザクは気を失った。




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もうちょっと戦って貰いたかったけど文才が無いのと長くなってしまうので（苦笑）ついに二人は離れ離れ。教会ではヤってませんよ〜。多分（笑）
20070119