SHINING STAR〜わたしだけの翔星〜5





「ル…ル…？」
　

　今日も今日とて逃げられた婚約者に、姉姫と妹姫達は申し訳ない顔をしながら謝ってくるが、こればかりは仕方が無い。でも相手がこれほど嫌がっているならご破算には…ならないことは分かりきっているくらいには親の性格を熟知しているスザクである。
　せめて当人同士で話が出来ればとも思うが、それも相手がいなければ話にならない。
　滞在も本日で四日目。
　穏やかなユーフェミアとナナリーはもちろん、最初は厳しかったコーネリアも、接していくうちにスザクの人柄に緩和していった。
「義妹がすまない…」
「いえ、僕の方もいきなりでしたから…きっと彼女も戸惑っているのだと思います」
　失礼にあたらない程度に言葉を交わすくらいわけない。
「スザクさん、せっかくですから街へ行きませんか？」
　自分たちはスケジュールがあるから午前中は動けないが、午後になれば自由になる。王宮内でただ時間を過ごすのはもったいない。せっかくだからこの国の素晴らしいところを見せたいという思いがユーフェミアにはあった。お姉さまも気分転換に、とユーフェミアの誘いに、だがコーネリアは緩く首を振った。
「すまない、午後は公務があるのでまたの機会に」
　そういえばと思い出す。ブルタニアには妹が好きなブランドの本店があることに。いきなり追い出されたため持ち合わせは少ないが、家族や友達へのお土産も買いたい。
　せっかくなのでスザクは好意に甘え、どうせならと地図を貰い一足先に一人街へ繰り出すことにした。
　スケジュールが済み次第合流予定のユーフェミアとの待ち合わせ時間までは余裕がある。思ったより早く目的の物を買い終えたスザクはゆっくり街中を散策することにした。
「へぇ」
　町並みは予想以上に綺麗だ。石畳はまるで中世のヨーロッパに足を踏み入れたようだ。場所によっては色を変える風景に、スザクは思いのままに足を運んだ。
「危ないよぉ」
　聞こえた小さな声は、どうやら公園の中からのようだ。
　不振に思いスザクは公園内へと足を踏み入れた。綺麗に刈り取られた芝生の上、大きな樹の下で女の子が不安そうに上を見上げているのが目についてその視線の先を追った。
　しかし次の瞬間、体が自然に動き、その樹の下まで走りこむ。
「くっ！」
　それなりの高さから落ちてきた人に、だが体を鍛えている賜物か、思った以上に軽い体を難なく抱きとめることに成功した。

「え…」
　記憶の中にある少女と重なる姿にスザクは目を見開く。
　見開かれた瞳は、昔と変わることのない魅了して止まない菫色。
　形の良い小さな唇が紡ぎだした言葉は。

「スザ…ク…？」

　夢にまで見た少女との再会が、今実現する。




next 6 >
_____________________________________________　 __　_
やっと次にいける…。スザクもどうやら妹に弱いらしい（笑）言わずもがな神楽耶ちゃんです。
20070117