SHINING STAR〜わたしだけの翔星〜3





　連続４日間、脱出に成功。いい加減諦めてくれても良いだろうに自称婚約者はまだ滞在中らしい。
　夜は夜で部屋に戻るが、夜分に訪れるようなことは無いのは徹底教育の賜物だろう。問題は朝どれだけ早く逃げ切れるかが勝負だ。
「さて、今日はどこへ行くか」
　黒のインナーに茶のジャケット、下はレザーのパンツという出で立ち。今の自分の格好を見てだれが皇女だと思うものか。堂々としてればバレないものだ。
「ふえ〜ん」
　ちょうど公園内を横切ろうと大きな木の下に差し掛かったとき少女が泣いていた。顔を上げれば風船が枝に引っかかっている。
　栗色の髪を左右で上の方に結んだその女の子は、小さかった時のナナリーを思い起こさせ、ルルーシュは放っておけなくて女の子の頭を撫でてやった。
「今取ってやるからな」
「おっお姉ちゃん！危ないよぉ」
　目の前で木によじ登り出したルルーシュに、女の子は驚きで先ほどまでの涙を引っ込めた。危なっかしい足取りに女の子の方が焦ってしまう。
　足が上手い具合に引っかからず、思ったより登りにくい。
　
　あいつはひょいひょい登っていたのに
　
　同年代…いや自分の義兄たちよりもずば抜けた運動神経を持つ男の子に、負けず嫌いなルルーシュは挑んでいってはいつも負けていた。
　いつだってあの夏は鮮明に思い出せるのに。あいつだけがいない。
　沈みがちな意識を引き戻し、四苦八苦しながらも風船が引っかかった枝まで登りきることは出来たのだが。
「あともうちょっと…」
　届きそうで届かないもどかしさ。指先が紐に触れた。
「やった…！？」
　しかし次の瞬間、バキっと音がして、枝が盛大に音を立てて折れた。
「…！」
　体制が悪すぎた。この高さではいくら下は土だと言ってもただではすむまい。
　衝撃に備え、ルルーシュは掴んだ紐を放すまいと握りしめる。
　しかし。
「痛…くない？」
　背中に廻った何か、しかし仄かに温かみを帯びているそれは、人の腕だと分かるのに時間が掛からなかった。
　そろりと目を開ければ。

『約束だよ』

　過ぎった幼いときの約束。

　まっすぐ見つめる大きな翡翠の瞳は昔と変わっていなくて。
「お前、スザク？」

　
「ル…ル？」

　
　時を経て、二人は再会する。



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短い…。でもとりあえず二人は再会できました。さあ次行ってみよう！…早めにアップします（汗）
20070114