●ファーストコンタクト　２





　次の日、キラの執務室にて〜

「……？」
　一瞬何かを視界の端にかすめたキラは、隣で書類を待っていたアレンをジッと見つめる。
「どうかなさいましたか…？」
　不思議そうな顔でアレンは声をかけるが、キラは何も言わずこちらを探るように見つめている。
『僕何かしたかな…まさかまた師匠関係で何かあったんじゃ…』
　アレンはその視線に段々いたたまれなくなり、うつむいていく。
　すると、キラはそこにさっきから気になっていたあるモノを見つけ愕然とする。
　髪の毛に隠れるギリギリ、見えるか見えないかという位置に存在する紅いモノ…その正体に気付いたキラは目を細めた。
「アレン、それどうしたんだい？」
「……？」
　何のことか分からずキョトンとしたアレンにキラは自分の首を指示す。
　すると、言わんとする意味に気付いたのかアレンは、たちまち顔を真っ赤に染め上げた。
「あっあの…これは…そのっ…」
「…誰だい？」
「〜〜〜〜〜〜！！」
　アレンは何とか喋ろうとするが、どう説明したらよいのか、頭がパニクって、口をパクパクさせるばかり…。

　そんなアレンの様子を眺めながら、キラは昨日やって来た男の姿を思い出していた。
　チラリと見ただけだったが、確かクロスが雇ったという魔剣士…ヤツが雇ったというだけで腹立たしいことこの上ないが、アレンには自分やステラが付いているというのに寄越したこと自体が自分に対する嫌がらせのようで(イヤ、絶対そうだ！)、非常に面白くない…。
　十中八九、あの男の仕業だろう…。アレンとどんなやり取りがあったのかも容易に想像がつく…。キラのオーラが恐ろしいまでに暗黒化していった。
『僕のテリトリーでアレンに手を出そうとは、随分ふざけたマネをしてくれる…』
　キラは魔王も真っ青な笑みをうっそりと浮かべた。

　アレンはクロスの『娘』だが、協会において、キラとアレンは『兄』と『妹』という、少々特殊な関係にあった。
　音信不通状態であるクロスに代わって、アレンが協会に来た時から面倒を見てきたのである。
　弟という立場であるキラにとって、妹というのはある意味あこがれの存在…。その点で、アレンは正しくキラの理想そのものなのだ。故に、娘同様大切に見守ってきたのだが…。
　その大事な妹に、たとえそれ以上の事がなかったと分かっていても(アレンの態度を見ていれば分かる)許せるはずもない。鬱血の痕をつけただけでも万死に値する。
　これは一度じっくりと己の立場というものを分からせてやらねばなるまい…。

　未だにパニクっているアレンにキラはにこやかに声をかけた。
「アレン！」
「ハッ…ハイ！！」
「昨日のマリアン道士が雇った魔剣士とやら、今度連れて来てね！」
「……え？」
「協会を預かる者として、1度は会っておかないとね！」
「〜〜〜〜！！」

『会うのが楽しみだよ…さて、ドウシテクレヨウカ…』
　キラは、楽しそうに頭の中でいろいろと策を練り始めた。

終わり？(笑)


（クズハｻﾏ）
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20071101