●ファーストコンタクト





「今日からおまえの護衛に着くことになった」
　突然目の前に現われた男は神田と名乗った。
　それは、家を表す名であって、個人を指すものではないが、本人は何か思うところがあるのか(笑)言う気はないらしい…。
　…と、あまりに突拍子もない出来事に、半ば他人事のようにつらつらと考えていたアレンだが、ふと我に帰って先程の言葉を反芻する。
　突然護衛なんて言われて困惑したが、当然自分は頼んだ覚えはない。また協会が一介の魔法使いに、しかもまだ弟子という立場の自分に着けるとは思えない…。となると後は……。
　いやな予感に見舞われて、アレンは恐る恐る聞いてみた。
「だ…誰に頼まれたんですか？」
　すると神田は事も無げに言った。
「クロス・マリアンに決まってんだろ！」
「……………」
　…やっぱりというか、予想通りというか、ハズレて欲しかったというか…しょーもないことを思いながらも、その後の展開が目に見えるようで、半分現実逃避しかけていたアレンを神田はさらに容赦なく地獄に突き落とした。
「契約金、その他報酬はおまえが払うことになっているからな！」
「〜〜〜〜〜？！(師匠〜！)」
　腹腸が煮えくりかえりそうになるのをどうにか宥めたアレンは、一番重要且つ気になる金額を尋ねた。
「ちなみに(聞きたくはないが)おいくらですか？」
「契約金は５０００万Ｇ。報酬は一回につき１００万Ｇだ！」
「！！！……ムリです！！」
　即効で辞退しようとしたアレンだったが、神田の方が一足早かった。
「契約主はクロスだ！おまえに拒否権はねーよ！！」
「………………。(払うのは僕なのに〜！！)」
　お約束すぎて涙も出ない…。(決まり事は守らないどころか借金よろしく踏み倒すくせに、お約束は守るなんて子供かよ！)
　神田に先制パンチを食らわされたアレンは、内心クロスへの呪詛を吐きながら、どうにか事態を回避出来ないものかと頭を回らせる。
　しばらくその様子をじっと見つめていた神田。ふと何かを思い付いたかの様にアレンに声をかけた。
「オイ！」
「…なんですか？」
　既に笑顔を取り繕えず、トゲトゲしい受け答えのアレンを気にすることなく神田は続ける。
「契約金は払ってもらうが、報酬は別のモノにしてやってもいいぜ！」
「………………。」
　この人が来た時から何だかイヤな空気が流れていたが、今やそれは暗黒空間へと進化しつつあるようだ…。
「いえ…(こうなったら)きちんと払います！イヤ、何が何でも払ってみせます！！」
「まぁ、そう急いで結論を出さなくてもいいだろう…おまえが…」
　ニヤリと笑いながら近付いてきた神田に、本能的に身の危険を感じたアレンは後ずさる。
　ジリジリと壁際まで追い詰められ、完全に逃げ道を塞がれたアレンを神田は腕の中に閉じ込めた。
「何でもオレの言う事を聞くってなら、チャラにしてやってもいい…」
「〜〜〜〜〜！！！」
　絶句するアレンにさらに顔を近付けていく神田。思わずギュッと目をつむったアレンは、首にチクリとした痛みを感じ、ビクンと身を震わせる。
「これで契約成立だ…」
「！？！」
　始め何が起きたのか理解出来ず、呆然としていたアレン。神田の視線の先に気付き、慌ててポケットの中に入っていた鏡を覗いた。
　すると、先程痛みが走った首筋に紅い痕が…。今度こそ、アレンはピキリと固まってしまった。
「これからよろしくな！」
　神田はしてやったりな顔で言った。
　その憎らしいほどに晴れやかな声に我に帰ったアレンは、ギッっと神田を睨み魔力を爆発させた。
「バギクロス！！」
　至近距離で食らった神田はその衝撃で、遥か彼方まで吹き飛ばされた…チーン
　(自業自得だ！！)byアレン


（クズハｻﾏ）
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2007