SEED　QUEST〜約束の地へ〜




「お花きれい」
　コクーンにより外界の空気を取り込んで太陽の変わりとなる光エネルギーに変換し、地上と変わりない生活を送るこの場所は、天地を繋ぐ門から近いこともあり、落ちてきた地上の種が芽を吹き、花が咲き乱れていた。
「出来た！」
　ステラの手元には５つ目の花飾り。
　キラとアスランとラクスとカガリ、そしてシンの分。
「君、この先は危ないよ？」
　声をかけられて気づく。
　目当ての色を追ってるうちに、コクーンの縁まで来てしまったようだ。
「こんにちは、可愛い妖精さん。こんな所までどうしたのかな？」
　ふわふわの茶色い髪。大きな翡翠の瞳。人見知りの激しいステラだが、不思議と嫌悪感はなくて、ステラはにこりと笑うと手元の花飾りを見せた。
「ステラ花飾り編んでたの」
　青年はにっこり笑顔を見せた。
「ステラって言うんだ。僕はランス。そこの家に住んでるんだ」
　ここに来て最初に通された長老の家だ。宿からさほど離れていないが、ずいぶん奥まで来てしまったようだ。
「ステラ−−−−−−！」
　シンの声が遠くから聞こえてステラは慌てて立ち上がった。
「君の騎士が迎えにきたようだね。あ、そうだ。これあげるね」
　ランスは腰のポーチから小袋を取り出してステラに手渡した。
　何だろうと紐を解いて中を覗けば。
「クッキーだぁ」
「仲良く食べるんだよ？」
「うん、ありがと〜」
　ステラは花飾りとクッキーを大切に持ってシンの元へ走っていった。
「シン〜はいこれ！」
　シンの頭に花飾りをかける。
「ステラ！あ、ありがとう…って、一人で行っちゃダメだろ！心配したよ？」
　手を振りながら屋敷に入っていった青年に、シンは律儀に頭を下げた。
　良い人か悪い人か。ステラはことのほか感応力が高いから警戒しない彼女に悪い人で無いと判断する。しかしそれでも何かあってからでは遅いので。
「ごめんなさい。お花摘んでたの。お兄さんランスって言うのよ」
「ふ〜ん…さ、戻ろう。キラさんたちも心配してるよ」
「うんっ！」
　二人はランスからもらったクッキーを食べながら宿へ向かった。
　夕飯があまり入らなくてキラに怒られるのはめになるのだが。



　最後の決戦前に訪れた出会いは、二人の記憶の湖に沈められた。しかし、それは後に大きな波紋を起こすことに、二人は知る由もなかった。



_____________________________________________　 __　_　

20080228