◆　◇　◆　◇　秘密　◇　◆　◇　◆




雪山のロッジで閉じ込められてしまった。
犯人はわかっている。
地球圏代表とする現大統領・リリーナ＝ドーリアンだ。
好きだと告白して。お互いがお互いを想っていたことが分り。
でもそれ以上の進展はなくて。だからリリーナとヒルデがやきもきしていたのを知っている。
だがまさかこんな形で強行してくるとはおもっても見なかった。

「どうしよっか」
そうは言っても全然困った顔はしていないのだが。
バチっと薪が弾ける。その瞬間に火の粉が舞う。暖炉内だけが赤く色き、暗い部屋を薄明るく照らし、デュオと自分は赤と闇とに姿を映し出していた。
「寒くなってきたな…」
薪は沢山そろえてあるのだが、いかんせん外気の影響が強すぎて、暖炉の炎だけでは部屋は一向にあたたまる気配は見せない。
「眠いのか…？」
この中で眠ってしまえば確実に凍死する。
デュオは目をこすって、なんとか起きようと頑張っているのだが。
ここまでたどり着くのに別の事件に巻き込まれ、デュオは足に負傷をしている。
たいした治療も出来ないまま。傷のせいで多少なりとも熱が出ているのだろう、普段よりも触れる部分が熱い。
「デュオ…」
「大丈夫…心配するなって」
多分リリーナ達も異常な事態に気付いているだろう。ただしこの吹雪の中彼らも動く事はできないはずだ。せめて雪が落ち着いてくれればいいのだが。
それまで二人もつかどうか…。
宇宙での放射能や防寒対策などは、それなりに用意していたから自分達でも対応できた。だがこの地球の、地上での気候に対してある程度の訓練は受けたが、それは実地ではない。対応しきれない部分は出てくのだ。
「ヒイロ…」
コトン、とデュオの頭が肩にかかる。
「デュオ…」
とろんとした目はまるで誘っているようで。
鼓動が、跳ねた。
このまま彼らの思惑通り実行するのは癪に障るが、今はこれしか方法はないだろう。
「デュオ…」
頬に手を滑らせば、手の冷たさに一瞬瞳が開かれた。が、意図を察してデュオは瞳を閉じた。
それが、合図。
唇が触れる。
初めてのキス。
それはとっても熱くて。
甘い――――――――――――

一度離れて、お互い目を見合わせた。デュオが恥ずかしそうに頬を赤く染めて笑みを浮かべた。
自分もなんだが温かくなって。
自分でも上手く笑みを浮かべる事ができたのだろうか？デュオが驚いたような顔をしている。
しかし次の瞬間急にマジメな顔になった。
「ヒイロ…好きだよ…大好き…」
そして今度はデュオから接吻けてきた。
お互い思う存分唇を配りあう。触れたら止まらなくなってきてしまった。これからの二人の関係を確かめる上でもう一度キス。
デュオの足の傷をふと思い出すが、今はこの熱情に流されて忘れてしまっているのだろう。先ほどまで襲っていた睡魔も何処へと吹き飛んでしまった。
服によって隔たれていた互いの体は、素肌と素肌が触れている部分はとてつもなく熱い。
そういえば、何かの文献で読んだ記憶がある。
雪山で緊急の事態に陥った場合、衣服は熱を奪うだけ。
ゆえに人間の肌と肌を触れ合わせ寒さを凌いで乗り越える…と。
それではこのままこの熱におぼれてしまおう…。
助けが来るまで自分達は大丈夫だろうから…。








「まぁ」
やっと雪が止み、救助にやってきたリリーナ・ヒルデを含む残りのＧパイロットたち。
毛布と互いの着ていた衣服に包まれヒイロとデュオは裸のまま抱き合って、健やかに…それは気持ちよさそうに眠っていた。
「あっきれた〜」
自分達のせいもあったのだが、それはもう心配して眠れない夜を過ごしていたというのに。
「でも良かった…」
ホっとして半泣き状態のカトルをトロワがそっと抱き寄せた。
五飛はひとしきり笑うと二人を足蹴にして起こしにかかった。


「え〜結局何も無かったの〜〜〜！？」
リリーナとヒルデのしつこい詮索をうけつつも、ヒイロとデュオは寒さを凌ぐためだけに素肌を合わせていただけだと言い切った。
悔しがる二人を後にして、デュオはペロっと舌を出した。
ヒイロも珍しく苦笑顔。
何処までいったのかは、
二人だけの
ひ・み・つ。





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自分で何を書いているのだろう…と途中で我に還って苦笑したものです。雪山…というか雪ネタはけっこうあります。少しずつみちや嬢に手渡せればなと思いつつ…。
2001/1/13　緋絽晶子