封印
南方の地の底に封じられているのは、かつてＤＷを、そして西新宿を襲ったデ・リーパー。闇の世界も飲み込みんで更に強大となり、封印が解けるのも時間の問題だった。
「僕がいくよ」
啓人が静かに言葉を紡いだ。
「闇に近い太一さんをさらに闇の側へやることはできない。なら適任者は僕しかいないでしょ？」
東は守護と補佐が揃って力が保たれている。西はまだ若い力で不安定。北が動けないなら南しか残らない。簡単な消去法。
幸いにも南には沢山の後継者に恵まれている。
「だからって…じゃあ子供たちはどうすんだよ！！まだ小さいのに…」
大輔の悲鳴のような叫びに、だが啓人は笑顔を向けるだけ。
「大丈夫。央が埋まれば元に戻るんだから。それまでの間だよ」
央の不在がここまで深刻な状況を作り出すとは、さすがの四聖獣でも思いもよらなかった。四神だけでは回復出来ないほどにＤＷは目に見えぬ部分が壊れていたのだ。
「ごめんね、健」
「謝るのは僕の方だよ。啓人ばかり…すまない」
なぜ自分が鍵でなかったのだろうか…。そればかりが悔やまれる。世界の定めた法にあらがう術は今の自分たちにない。
「メイリンたちを頼むね」
長女、長男は物わかりがよすぎるが、下の子たちはまた別だ。生まれてまだ１年に満たない四女が母親の温もりを知らず育つのかと思うと不憫でならなかった。
「じゃ行くね」
一人ずつ抱き寄せて、温もりを忘れないよう刻み付けた。
「ママ…」
「良い？ママが帰ってくるまでパパの言うことちゃんと聞くんだよ？」
最後の別れではない。暫しの別れなのだと言い聞かせて。
「メイリン、シャオラン。パパを助けてあげてね」
「ママ…！」
「行ってきます」
啓人は笑顔で手を振った。
『すまぬな、タカト』
スーチェーモンが謝罪の言葉をはくのはこれが初めてだ。
啓人が力を解放すれば、南方は凍結する。時の流れも止まるため、健良たちは南方から脱出してもらった。子供たちの様子もある為、暫くは東方で身を置くことが決まっている。
「僕は感謝してるよ。この力を持っていることを。だって大切な人を守れるもの」
目の前に浮かんでいる魔方陣が書かれた大地。この真下にデリーパーが居る。
啓人はスーチェーモンの背から飛び降りると、陣の中心へ立った。
啓人の力に呼応して、足元から氷の柱が昇り、啓人の体を包み始める。
冷たさも、かといって熱さも感じない。
啓人の意識がゆっくりと沈んで行く。
「健…」
それが啓人が呟いた最後の言葉。
陣から放たれた光は全土に広がり、深部に達した。
活動的だったデ・リーパーはその動きを完全に止め、南方は時を止めた。
央が付くまでの間、南方は静寂の眠りに付くことになる。
2006.7.11
子供は松田ベーカリー参照。と言ってもまだ一人だけだったな…（汗）長男のシャオラン君《宵藍》と書きます。父親似で齢５つで光子郎並の天才プログラマーです（笑）他の子達はその下に双子の男の子、さらに下に双子の女の子。最後に女の子。このとき啓人の中に命が宿ってまして、全部で八人いますです。ジェンってば頑張りすぎ！（爆笑）…シリアス展開がこれでパーだ、ハハハ（笑）