天下無敵のダーリン２
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「うわ〜ちっちゃい…」
母胎…？の安全を考慮し、早い８ヵ月ほどで取り出された小さな命。
保育器で眠るその姿にスザクは感動に瞳を潤ませた。
金の髪にうっすら開いたアイスブルーの瞳は紛れもなく、目の前の上司と統括責任者の血を引いている。
「いいな…」
小さくつぶやかれた言葉にすぐさま反応したのは疲れきったロイドだ。
メガネがキランと光る。
「君たちもどうだい？愛の結晶だよ？」
スザクの瞳がきょろりと動く。目の前の赤ん坊、シュナイゼル、そしてロイドへと視線を向けると口を開いた。
「愛…僕とルルーシュの…出来ますか！？」
スザクの結論は早い。またこうと決めたことは覆さない。
もちろん、と言って目を細めるロイドにスザクは瞳を輝かせた。
「行ってきます！」
敬礼して出ていったスザクに。
「元気だなぁ」
はっはっは〜と豪快に笑う第二皇子。
「僕だけ大変な思いするのは悔しいし〜」
細く歪められた瞳に浮かぶのは、これから起こるだろう楽しいことへの期待が大部分を占めているのは間違いない。
「ルルーシュ！」
スザクの姿にルルーシュの顔が綻ぶ。そのいつみても心安らぐ笑顔はスザクにとって清涼剤とともに、迎えてくれる世界で唯一安心できる場所。
だからここがどこだかも忘れてスザクは爆弾を投下した。
「ルルーシュ！僕と子供つくろう！」
「はぁ！？」
一斉に反応したのは生徒会の面々。今日は珍しく今スザクが駆け込んできて役員全員がそろった所だった。ルルーシュはあまりのことにフリーズを起こす。
「ちょっスザク君！？何いきなり言ってるの！」
一番最初に脱出できたのはルルーシュに恋する乙女シャーリー。
その声に自分を取り戻した面々が騒ぎだす。
「何で！いきなり子供！？」
「何言ってるの、同性で子供なんか出来るはずないじゃない」
「おいスザク〜寝言は寝て言えって」
笑顔のまま交わし、スザクはルルーシュの腕を引っ張って隣の部屋へと入ると鍵を閉めた。
「スザク…？」
綺麗な顔がゆがむ。それでも整った顔のままなのだ。
でもやっぱり怒った顔より笑った方が好きだから。
「ロイドさんとシュナイゼル殿下の間に子供が産まれたんだ。すごい可愛いよ」
「それ以上何も言うな…」
それですべてがわかってしまった。どっとした疲れが沸いてくる。
ディートハルトの裏情報で半信半疑であったが、まさかスザクから確証がえられることになろうとは思わなかったルルーシュである。
「何よそれ！」
聞き捨てならないのはミレイの方だ。
仮にも婚約者であるロイドが皇族とは言え男に孕まされるとは！
まさか聞かれていたとは思わなかった。一応トップシークレット事項だから別室で話していたのだが。
「甘いわね、スペアキーくらいあるわよ！」
指を唇に当て思案する。しかしそれも一瞬のこと。
「仕方ないな」
いいのかルルーシュ！
阿鼻叫喚のメンバーは、二人だけの世界には視界すら入らない。
二人手を取り向かったのは特派のラボ。二人を待っていたのはシュナイゼル。
「久しぶりだねルルーシュ。待っていたよ」
全てを分かっているような口ぶりにルルーシュは眉を顰めた。
「お願いします！」
スザクが礼儀正しくお辞儀をする。
「おや、枢木くんが産むのかい？」
ルルーシュだとばかり思っていたシュナイゼルが驚いたように目を瞠った。ロイドも珍しくそのアイスブルーの瞳がしっかり見える。
「スザク！？」
ルルーシュもそのつもりだったのだ。なので慌ててスザクの肩へ手を伸ばした。
スザクは振り向くと笑みを見せてルルーシュをそっと抱きしめる。
「君につらい思いはさせたくないんだ」
腹の上部、薄い膜の間に疑似子宮を作りそこに受精卵を着装させる。異物に拒絶反応を起こさないように薬と女性ホルモンを投与するのだ。ロイドは拒絶反応を起こすことは無かったが、余波でいつも眠そうにしていた。可能性を考えればルルーシュにつらい思いをさせるわけには行かない。いくら同意とは言えスザクのわがままでしかないのだから。
「だからって…」
続けられる言葉はしかし突然のエマージェンシーコールにより遮られた。
「ランスロット出動要請が出てます」
今まで成り行きを見守っていたセシルだったが、画面に映し出されたコールを無視できるはずが無い。
その言葉にルルーシュは眉を顰めた。黒の騎士団には指令を出していない。別の組織が動き出したか。
「話は後だ」
「行ってきます」
「！」
『行ってきます』とは、『ただいま』がある言葉だ。
それは約束。スザクは約束を違えることはない。必ずルルーシュの処へ戻ってきてくれる。
ルルーシュが一番欲しかった言葉。
だから決意した。
その場所を作るのは自分の役目だと。
「兄上」
ルルーシュの言わんとしていることを悟り、シュナイゼルは優しい瞳を向けた。
「枢木君怒るよ？」
自分との繋がりを欲していたのはスザクだけではない。
「俺が！欲しいんだ…スザクを…」
憎きブリタニアの傘下に下り、あまつさえ軍属でユーフェミアの筆頭騎士。それでも諦めることの出来ない至高の存在。絶望と闇の中でさまよう自分を救い上げてくれた輝き。
ルルーシュの決意が固いことを見てシュナイゼルは手術室へと誘う。
照らされた手術台にこくりと喉が鳴った。恐怖は全くないとは言い切れない。でもそれ以上に覆うのは紛れもなく歓喜。
「スザク…」
ルルーシュはゆっくり瞳を閉じた。
大した痛みもなく手術は終わった。
触ってもわからないが、確かにこの中に命は宿ったのだ。
大変なのはこれからだ。それでも乗り越えていける。
「愛だねぇ」
でも私達の愛には君達でも叶わないよ、と胸を張って答える義母兄に、なんだか頭痛がしてくる。
「よく言えたものですね。貴方の時は無理矢理だと聞きましたよ」
「無理矢理ではないさ。ロイドは恥かしがりやさんだからね」
何を言ってるのかこの馬鹿義母兄は。
「大丈夫、僕は君たちも好きだよ」
「バカ兄！？」
にっこりロイヤルスマイルに臆すくることなくルルーシュが叫ぶ。
でも内心嬉しいのも確かなのだ。
幼い頃一番尊敬していた義母兄。
既に皇位を返上したルルーシュに対し、そしてイレブンであるスザク相手にこの対応は破格だろう。
しかし叫んだことで体力を消耗しへなへなとソファーに沈む。いくら簡単に済むと言ってもやはり身体にはそれなりの負担はかかるものだ。
「ルルーシュ…君弱すぎだよ？」
意志・気力は天下一品、しかし体力だけは標準以下とは。
お兄ちゃんは悲しいよ。よよよと泣き崩れるシュナイゼルに一矢報いたかった諦めた。何をやっても勝てないのは目に見えている。
いつか見返してやる！決意を固めるルルーシュだった。
「ただいま戻りました…ルルーシュ！？」
寝台に横になっているルルーシュにスザクは目を見張った。
「まさか…ルルーシュ！」
少しばかり青白い顔に指を伸ばすと指先がひんやりする。熱を与えるように手のひらを当てる。
こんな時になぜ出動要請が出たのか悔やまれる。
「俺が決めたんだ。お前にはやらせない」
「ルルーシュ…」
ルルーシュが、以前よりも綺麗に見えて、スザクは見惚れてしまった。
何度好きになればいいんだろう。昨日よりも今日、今日よりも明日。ルルーシュへの愛が日増しに強くなっていく。押さえ切れない溢れる重いに、スザクは思わず抱きしめた。
「ちょっ、スザク！苦しいぞ！！」
「ごっごめん！」
ルルーシュはもう一人の身体じゃないのだから。
そう、この中に、自分との愛の結晶が宿っているのだ。
「ごめんね、ルルーシュ」
「いや、いい…」
スザクに抱きしめられるのはなにも嫌なわけではないのだ。
「疲れただろう。今日はもう帰って良いよ」
そうだ、ここには他に人もいたのだ、と今更ながらに思い出して、ルルーシュの顔が真っ赤になる。
反してスザクは気にした様子は無い。
この当りはシュナイゼルとよく似ていると思うルルーシュだった。
「はっ！」
シュナイゼルの言葉にスザクは敬礼すると、以前よりも軽くなった体を簡単に抱き上げて頭を下げて出ていった。
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おばか小説第２弾。お兄ちゃんと仲が良いルルが書きたかっただけ〜。
パラレルなので舞台背景は突っ込まないで下さい（笑）
20070922
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