eternity





「バレンタイン？」
「そう、ルルーシュはスザクに何をあげるのかしらん？」
　ミレイにちゃかされながら掛けられた言葉に、だがルルーシュはきょとんと顔を向けた。一体何を言っているのかと。
「そっか、ルルーシュは知らないんだっけ」
　ミレイは目を丸くして今更ながらに思い出した。
　ブリタニアでは男性から女性へと向けられる愛は日本では逆なのだと。
　聞いて初めてルルーシュは顔を真っ青にさせた。
　博識を自慢しているのに、ここにきてうっかり落とし穴。
　おかしいなとは思っていたのだ、朝からスザクに渡されるプレゼントの山、山、山。話しかけようにも邪魔され、かと言って教えてくれる人もいない。ふてくされて生徒会室へ来たは良いがひっきりなしの来訪はリヴァルとやはりスザクへのプレゼント。
　しかしブリタニアから外に出ることがなかったルルーシュに他国の風習など知る由もない。
「まぁ仕方ないわね」
　スザクとルルーシュが恋人同士であることは公認済みだ。しかしこの日はあまり意味を成さない。お遊び気分もありプレゼントは蔓延している。
　げた箱から机、ロッカーに至るまで詰め込まれたプレゼントはそう言うことだったのだ。
　シャーリーが嬉しそうにプレゼントを用意していたのを思い出した。
　料理は得意だ。しかし今からではとても間に合わない。
　やれやれ、とミレイはため息を吐いて隣の部屋へ移動した。もうじき来るであろう騎士のお手並み拝見と言ったところだ。
　泣きそうな顔をしていることにルルーシュは気づいていなかった。



「ルル？」
　やっとの思いで生徒会室にたどり着けば、机の脇に置かれたダンボールにはチョコの山積。その奥隅で丸くなっているルルーシュにスザクはそっと声をかけた。
　ピクリと反応するが顔は上げられる事はない。
「泣いてるの？」
「泣いてない！」
　そう、実際泣いてはいない。けれどスザクへの思いは誰にも負けないと自負している分悔しくてたまらないのだ。皆はスザクへ渡しているというのに。
「ルル、顔上げないとキスできないよ」
「ばっ！」
　いきなり何を言い出すのかと、思わず顔を上げてしまった先に差し出されたのは。
「はい」
　両手いっぱいのチューリップの花束。
「バレンタインデー。ブリタニアでは男性からって聞いたから」
　濃いくらいの花の香りがルルーシュを包む。先ほどまでの尖った心が解れていくようだ。
　落ち着いてくればやはり思い出されるのはやはりプレゼントのことで。
「俺は何も用意してない…」
「仕方ないよ。知らなかったんだから。それに僕も教えなかったし」
　直接来たのは丁寧に断りを入れたが、義理だと言って軽く渡されたものやげた箱や机の中に置かれたものはどうしようもない。それでもルルーシュがいるから去年よりはだいぶ減っているのだが。
　いくら貰ってもはっきり言って嬉しくない。本命から貰わなければ意味はないのだ。しかし彼女の国ではそう言った風習は無く、逆に男性から渡すのだと事前に教えて貰っていたのはスザクにとって幸運だった。
　今まで出来なかった分の思いを込めて、用意したのは紫のチューリップ。美しい色合いのそれはルルーシュに合うということもあるが、花言葉に惹かれたのだ。
「ルルなら知ってるよね」
　耳元で囁かれたら、その声に弱いルルーシュはもうどうすることも出来ない。
「愛してるよ…ルルーシュ」
　何度愛を囁いても、何度口づけても足りない。何度体を重ねても欲する思いは貪欲で。
　それでも離れていた時間を思えばとても幸福なことだ。
「バカスザク…ん…」
　口から出る悪態はルルーシュの照れ隠しでしかないけれど。
　その先に続く言葉は重なった唇の中に仕舞われた。


　紫のチューリップ。
　花言葉は《永遠の愛情・不滅の愛》
_____________________________________________　 __　_
…Shining〜のスザルル。バレンタイン過ぎてしまったが…まぁ勘弁してください（苦笑）このスザクはクサイと思う…アルペンローゼよりましだが（苦笑）
20070215