僕の許婚を紹介します
「ルル、ナナリー。おめでとう」
「スザク…それは何だ？」
いつもとは違う挨拶もさることながら、つり上がってる大きな目を更に大きくさせて、ルルーシュが見つめる先はスザクの着ている服なるもの。
「これ？着物っていうんだよ。そっか、ルルたちは見るの初めてなんだよね」
日本代表である枢木家の新年は家族皆正装は着物を着るのが習わしである。
ブリタニアとは大分異なる装いに、ルルーシュは正直戸惑った。
「母さん！ルルとナナリー連れて来たよ！」
「ルルちゃん、ナナちゃん。こちらへ来てくれるかしら？」
スザクが声を上げると襖の中から奥方の声が。何やら薄ら寒いものを覚えながらも、奥から聞こえる声に何故か抗いがたく。
「ほら、早く」
それに、いつもと違う慌ただしい雰囲気に、ルルーシュは少しばかり気後れするが、スザクの笑みに誤魔化されつつもナナリーの手を引いて部屋へと足を踏み入れた。
スザクの母親もお手伝いさんたちも着物を着ていた。
「こちらへいらして」
「え、あ…」
小さな手は縋るように同じく小さな手へと伸ばされた。小さくきゅっと握り返しスザクはルルーシュが一番好きな笑顔で返す。
「大丈夫だよ。着替えるだけだから」
「スザク。あなたここはいいわ」
「え、でも…」
「そろそろお客様が来る頃です。お父様とお迎えするのが貴方の仕事でしょう」
ぴしゃりと母親に遮られれば、スザクに反論は許されない。本家の跡取り息子はやはりなんだかんだとやるべきことが多い。新年ともなれば尚更だ。
渋々ながらも後ろ髪引かれる思いでスザクが部屋を出ると、母親は一変して喜々とした表情を浮かべた。
「ナナちゃんも着替えるのに殿方がいては困るでしょう？」
幼くても皇女だ、むやみに肌を晒して良いはずがない。
「これよ」
広げられた着物。１枚は梅を散らせた薄桃色、もう１枚は百合の花をあしらった薄紫。ルルーシュの目から見てもとても素晴らしいものだと分かる布地だった。
何となく先ほどのスザクが着ていたのとは違う感じが受けなくもないが、母親とお手伝いらの勢いに飲まれ、二人はあっという間に着替えさせられた。
「明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い致します」
スザクの礼儀正しい挨拶に不快感を催す人などいるはずも無く。
「流石は枢木首相の御子息だ。しっかりしている」
こそりと伺えば普段厳しい父親の顔は幾分か嬉しそうだ。でもそれよりスザクの心配事はルルーシュのことで。厳しそうに見えて案外おちゃめな母親にいつも振り回されて内心困っているルルーシュを何度助けたことか。今それが出来ないことが心苦しい。ふと襖が開いてお手伝いと共にナナリーの姿が。
車椅子にちょこんと座る様はまるで愛らしい雛人形。
「ナナリー可愛いよ」
「ありがとうございます」
スザクの言葉にナナリーは頬を染めて笑顔で返した。
「お兄さまもとっても素敵ですって」
いつもならナナリーの後ろに居るはずの人物がいないのが気になる。
「さぁ、ルルちゃん」
母親の声でそちらを見れば。中々姿を出さないルルーシュに痺れを切らしたスザクが父親から離れようとして、だがそれはすぐに止まった。
「！」
一同がシンとなる。ルルーシュの瞳に合わせたかのような藤色の着物は裾へ行くにつれ濃い紫のグラデーションを見せる。普段おかっぱの漆黒の髪はアップにされ、届かず垂れているサイドの髪は動く度に揺れ、幼いながらも艶やかな姿にスザクは釘付けになった。
言葉を発することができない。
「まったく…貴方も甲斐性がない子ね」
父親そっくりと呟かれた言葉も今のスザクには届かない。
皆の反応以前にスザクが無反応なことに不貞腐れてしまったルルーシュに、母親から背中を押されてやっと我に返ったスザクは、ルルーシュへとそっと手を伸ばし、自分より少しだけ小さい白く細い手を握り締めた。
「ルル…すっごく可愛い…」
「なっ！」
これでもれっきとした男の子だ、可愛いと言われて素直に喜べるはずが無く。でもスザクの嬉しそうな満面の笑みに何故か恥ずかしくなりルルーシュは顔を赤くして下を向いてしまった。赤い顔につられて、自分の発言にスザクも今更ながらに顔を赤くして下を向く。
微笑ましい幼い二人の姿に、大人たちの見つめる目は優しい。
「もう二人とも可愛いんだからvv」
外交目的という名目で預けられたが、実質人質であることは間違いなく。しかしスザク同様自分の子供のように扱う広い心を持った女性である。のだが…いかんせん彼女は麗しい見目に反して楽しいことが大好きなので。
「お前もほどほどにしておけ…」
「分かっていますわ」
本当に分かっているのか居ないのか。にっこり微笑む妻の姿に何か黒いものを感じ、日本を束ねる首相は内心汗をかいた。
この母の、とんでもない爆弾発言に一同驚くのは数分後の事。
おまけ
「ルル、こっち」
馴染みのおじいさんの姿を見つけ、スザクは挨拶をせんと、ルルーシュの手を取った。まるでお姫様をエスコートする王子様のように、スザクは歩きにくそうなルルーシュにあわせゆっくり誘う。
「桐原のおじいさま、明けましておめでとうございます。今日はよくお出でくださいました」
「スザクか。暫く見ないうちに大きくなったな」
この翁、枢木政権を影で支えるすごい人なのだが、スザクにとっては時折遊びに来てくれる優しいおじいさんという認識でしかない。
「その子供は…」
スザクの隣に居る子供を見て、桐原は目を細めた。
「さぁ、ルルちゃん。先ほどおばさんが教えた挨拶をするのよ」
何時の間に側に来たのかスザクの母親にこそりと耳元で囁かれて、ルルーシュは心の中で一度言葉を反芻する。難しい日本語なので皆の前で失敗するのはプライドが許さない。
「初めてお会いした時以来ご無沙汰しています。スザクの許婚のルルーシュです」
「ルっルルーシュっ！？」
スザクの素っ頓狂な悲鳴にルルーシュは自分が何か間違ってしまったのだろうかと首をかしげる。しかし教えてもらった言葉に間違いは無いはずだ。
「ひょ〜ひょっひょ、許婚か。それは結構結構！」
愉快愉快と笑う桐原に、慌てたのはスザクだ。
「かっ母さん！」
「料理、裁縫何でも出来る、こんな出来た子は他に居なくてよ。それに今でこんなに可愛いのよ、将来はどんな美形になるかなんて分かりきっているわ。あなただって満更でもないでしょう？」
スザクの淡い恋心は、母親にはお見通しである。
「でも母さん！日本の法律じゃ男同士じゃ結婚できないって（汗）」
子供の割には賢いスザクだ、常識はもちろん知っている。
「大丈夫よ、お父さんが法改正して男の子同士でも結婚できるようにしてくれるから。ねぇあなた」
「！！…（--;)」
そのやり取りの間中、ルルーシュはきょとんとしながらも、その手はスザクと繋がれたままだった。
後日許婚の意味を知ったルルーシュが、恥ずかしさの余りスザクと１週間部屋に閉じこもり口を利かなかったのは言うまでも無い。
果たして、日本の法律が変わったのか。それは誰にも分からない（笑）
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…チビスザルル。スザクママは偽造です。今度は神楽耶ちゃんも出して見たい。彼女はスザクの妹か姉かはたまた母親だったり…？んなバカな（苦笑）お正月用で作ったのですが置いてしまったので…先日出てたじーさまを出してみた。
20070110
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