親の心子知らず。義姉の心義妹知らず？





「何だと！？」
　聖堂内にヴリタニアが第２皇女・コーネリアの声が響き渡った。

「ルルーシュ！」
　皇女らしからぬコーネリアの不躾な行動にルルーシュは顔を顰める。しかしすぐ後ろから顔を覗かせたユーフェミアが御免なさいと手を挙げるのを見て取れ今回の件が異国で戦場に出ていたはずの彼女の耳に入ってしまったことに、これから起こるであろう問答に小さく溜め息をついた。そしてタイミング悪くも入ってきたスザクにルルーシュは額に手を当てた。
「枢木スザク准尉！これはどういうことだ！？」
　まだ気が早いというのに、面白半分に妹達が用意したマタニティー服を着させられているルルーシュの姿もまた助長しているのだろう、戦士としての気迫はもともと備えているコーネリアのそれ以上の剣幕に、だがスザクは苦笑しながらも気を取り直して必殺技の笑顔を見せた。
「これはコーネリア殿下にはご機嫌麗しく」
　皇族に対する騎士の挨拶を恭しく行なうスザクに、コーネリアの血管が切れた。
「ふざけるな！大事な我が義妹を傷物にしておいてよくもそのような態度を取れるな、貴様！！」
　ルルーシュは傍観に徹しているようだ。スザクは溜め息を一つつくと、顔を上げまっすぐコーネリアを見つめた。
「傷物だなんてとんでもありません。これは僕たちの愛し合った結果です。それに…」
「姉上。この件は既に父上と話は済んでおります」
　スザクの後に続くように、やっと重い腰を上げたルルーシュがコーネリアを落ち着かせる様にそっと言葉を乗せる。もちろん彼女が好きな極上の笑顔を付け足すことは忘れない。
　地球のほぼ全土を占領下に納める大帝国ブリタニアの皇帝である父親と継承権は低いとは言え血の繋がりがしっかりとある娘の強情な所は嫌なくらいに似たもの親子の会話は、あれは話し合いというレベルの問題ではなかったことは、その場にいたほかの面々は思い出したくもない記憶の一つになってはいるが、口を挟もうものなら二人にどんな仕打ちをされるか分からないので完全に傍観に徹している。
　以前から愛する人と共に生きたいと父王に打診していたが、良い返事が中々もらえない事にルルーシュは痺れを切らした。ならそう仕向ければ良いと。兄弟中で次兄シュナイゼルに次いで頭のキれるルルーシュだが、一つのことに囚われると他を見向きもしないで突っ走る所は彼女の欠点でもある。スザクとは既にそれなりの事を致していたから避妊しなければ遅かれ早かれ身ごもるのは必須。
　打ち明けられた皇帝は、大切な娘がそうなったと知ると白目をむいてひっくり返った。目の前で人が殺されようが、次々各国を占領していこうが動じない冷徹な心を持つ男が。なんだかんだと彼も人間だったのだと何故か感動した側近は数知れず。そんな皆を他所にここぞとばかりにルルーシュは気を失った父王の親指をむんずと掴むと二人の仲を認める旨の書かれた証書に血判を押した。その目を見張るほどの鮮やかさは近衛兵らが思わず拍手を送ったほどだ。
　もともと皇女に対し着ける騎士は異例はあれど将来を約束されたも同然だ。今更どうこう言われる筋合いは無いと言うのがルルーシュの言い分だ。
「ルルーシュ。私は二人の仲を反対するつもりはない。だが自分を大切にして欲しいのだ。お前たちはまだ１７だ。皆から祝福されて誕生するはずの命をこのような形で宿して、まだ未熟なお前たちはきちんと育てられるのか？」
　浅はかな行動をコーネリアから窘められてルルーシュはバツが悪くなり真っ直ぐな視線を見ていられず逸らした。
「枢木准尉。守るべき主が誤った方向へ行ってしまったとき正すのも騎士の務めだ」
「…はい…」
　コーネリアは盛大にため息を付くと立ち上がりそのまま扉へ向かう。
「だがお前たちの気持ちはよく分かった。沙汰があるまでまて」
　それだけ言うとコーネリアは部屋を出て行った。
　コーネリアの最後の言葉にルルーシュとスザクは顔を見合わせる。彼女がそう言ったのだ実行はするだろう。今更嘘でしたとはバレては余計ややこしい事になるだろう事は目に見えているので。
「いいか、スザク。落ち着くまでこの事は秘密だぞ」
　しーっと人差し指を立てて口に当てるその可愛らしい姿に、皇女と騎士の主従関係が無かったとしても誰が否と答える事ができようか。ゆえにスザクが答えられるのはただ一言。
「Yes,your Highness…」

　それから盛大に二人の婚約発表が執り行われたのは、気を失っていた皇帝が目を覚ました１週間後のことだった。



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…ルル女の子。完全にギャグです。コーネリア大好きｖ皇帝も結構好き。若本さん声で想像するとよけい笑える（爆笑）
20070108